ステイプラーによる憩室離断術

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ステイプラーによる憩室離断術

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2002-06
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E-publication
WeBSurg.com, Jun 2002;2(06).
URL: http://www.websurg.com/doi-ot02jp229.htm

ステイプラーによる憩室離断術

1. イントロダクション
症候:
Zenker憩室に起因した咽頭食道部の症候を訴えて受診す
る患者には2通りのパターンがある。ある患者はごく小
さな憩室であっても強い咽頭食道部の症状を訴える。一
方、大きな憩室を指摘されていても、咽頭食道部の不快
感はその初期の過程に気づくのみの患者もいる。このよ
うな臨床例より、大きな憩室があるからといって、憩室
を切除したり、咽頭部や椎骨前筋膜への固定術を行うこ
とは危険なことである。一方、ごく小さい憩室にも関わ
らず高度の嚥下困難を訴える患者に対しては、その原因
となる輪状咽頭筋の役割や症状を軽減する輪状筋切開術
の方が重要である。

病態生理学:
下咽頭後壁から咽頭の下収縮筋と輪状咽頭筋の間を通っ
て発生する圧出憩室は、輪状咽頭筋が発達していなかっ
たり(Cook et al., 1992a)、局所の線維化が関連し
(Cook et al., 1992b; Lerut et al., 1992)嚥下時に咽
頭内圧が上昇することが原因で発達する。その結果とし
て、上部食道括約筋(UES)を形成する構造物、すなわち
輪状咽頭筋自体や起始部の頚部食道壁内の筋線維に対す
る筋切開術は解剖学的な異常を矯正する決定的な手段と
なると考えられる。近位食道筋切開術は、1cm以下の小
さい憩室に対しても、1cmを超える大きな憩室に対して
行う咽頭後壁や椎骨前筋膜に憩室嚢の固定を行う術式と
組み合わせた方法にも、嚢はそれ自体が疾患というより
も筋疾患の結果生じたものであるという原則に従って適
応されてきた(Sideris et al., 1999; Hauters et al., 1998)。
しかし、憩室の病因がUES機能不全の関与であるにもか
かわらず、筋切開を伴わない嚢切除のみでもすばらしい
結果が報告されている(Michot et al., 1978)。これら
より、よく発達した憩室の存在に関連しておこる症候は
嚢自体に依存しており、食物が貯留して頚部食道を前方
に圧迫することにより、気管との間で食道を圧排してい
ることが考えられる。

2. 適応と禁忌
適応:
- 全麻下の内視鏡検査で共有壁(common wall)が3cm以
上の憩室
- 以前に頚部手術の既往がある患者(頚動脈内膜摘除
術、甲状腺葉切除術など)
- 左下喉頭神経の損傷とそれに起因する声帯麻痺が原
因で頸部の再検査を行えないために、憩室に対する
頚部アプローチの失敗が考えられる患者
- 歯のない老人は内視鏡下アプローチのよい適応であ
る。なぜなら、経口的な憩室鏡の挿入がより容易に
行えるからである。

禁忌:
- 全麻下の内視鏡検査で共有壁(common wall)が3cm未
満の憩室
- 中咽頭が狭く下咽頭から頚部食道への憩室鏡の挿入
が困難な症例。内視鏡下アプローチの候補者には全
員術前に3指が口腔内に挿入できるかどうか調べてお
く。3指が挿入できない場合は憩室鏡が咽頭に挿入で
きないことの判断材料となる。
3. 術前処置
1. 共有壁(Common wall)
-手術の数日前に外来で側面像も含めたバリウムによる
頚部透視検査を行い憩室と頚部食道との共有壁の距離を
評価する。術前に行う壁の長さの評価では、拡大や縮小
などの修正因子によって変わってくる。さらに、憩室の
底部や鎖骨が重なり正確な評価は困難である。

- 術前日は患者は流動食のみに制限され、憩室内腔を
洗浄するために大量の飲料水を飲む必用がある。
- 中咽頭の浄化のために局所に抗生剤投与が行われ
る。
4. 手術室の配置
• 患者
患者は手術台のうえで頭部を過伸展させた横臥位とす
る。Propofolやalfentanilなどの短時間作用型の全身麻
酔薬を用いたあとに、小径の気管チューブで経鼻挿管す
る。
• チーム
術者は患者の頭側に立つ。清潔看護師は術者の右または
左に立つ。助手は必要ない。

1. 術者
2. 麻酔医
• 機器
1. 機械台
2. 手術台
3. 腹腔鏡や胸腔鏡のようにビデオカメラに取り付けら
れたモニター
5. 器械
1. 先端を改良した30mmの内視鏡用ステープラー。アン
ビル先端を短縮し共有壁を切除・縫合したのちの残
存隔壁長が短くなるようにする(長くても3mmまで
に統一する)。このように改良しても、ステープ
ラーの基本性能は変わらず、切断長は27mmでステー
プリング長は30mmである。

2. 5 mm 0°内視鏡

3. 憩室鏡。この憩室鏡は2唇を有し角度を変えること
ができるため、各患者独自の中咽頭の解剖にうまく
適応する。また、リニアステープラーと光源、5mm
径の内視鏡を並べて挿入できるようにデザインされ
ている。先端はビデオカメラの横に接続できるよう
に屈曲しており、ステープラーの妨げにならないよ
うになっている。憩室鏡にはテレスコープが取り付
けられ、多機能な可動システムにより共有壁を切断
し縫合するために最良の視野が得られるようになっ
ている。
6. 手術手技
• 展開
1. 上唇
2. 食道
3. Common wall
4. 憩室底部
5. 下唇 

2唇の憩室鏡を口腔から咽頭へ直視下に挿入する。喉頭を前方に挙上すると憩室の開口部が確認できる。憩室鏡の下唇を憩室内に挿入し、上唇を頚部食道に挿入する。両唇をおしひろげることにより、それぞれの内腔間の壁を露出する。共有壁と食道内腔の確認が困難な場合は、直視下にカテーテルを食道内腔に挿入するとよい。憩室内に貯留した唾液を吸引したのちに、粘膜面を十分に観察し異常があれば生検を行う。
• ステープリング
1. 食道内腔
2. Common wall
3. 憩室嚢

改良したリニアステープラーを憩室鏡を通して咽頭に挿
入する。共有壁をはさんでステープラーの2本のフォー
クを設置する、すなわち憩室嚢にアンビルを挿入しステ
ープラーのカートリッジを頚部食道内腔に挿入する。フ
ォークを中心に設置したのち、ファイヤーすると両端が
3重にステープリングされその間にナイフが押し出され
る。フォークを分離しステープラーを取り除くと、輪状
咽頭筋の力でステープリングされた両端が外側へ引き離
される。共有壁内に存在している筋肉も切断される。こ
のようにして中心の切れ目は2つの内腔の間でV字型に開
放される。共有壁末梢側の切離を完了するためには追加
のカートリッジを使用する。創縁の止血が確認されれ
ば、憩室鏡を抜去して患者を覚醒させる。
• ステープリングの条件
憩室と頚部食道との間の共有壁は3cm以上で切除できる
長さでなければならない。これにしたがえば、十分に長
い筋切開(Lerut et al., 1992; Sideris et al., 1999; Bremner and DeMeester, 1999; Orringer, 1980)
によって輪状咽頭筋と近位食道壁の中に存在する筋線維
の両方を切離することができる。やわらかい管状構造物
の口径に関する一般原則にしたがえば、壁の縦切離距離
が長くなればなるほど、口径の広がりは大きくなる。現
実的には憩室の共有壁は1回以上のステープラーカート
リッジでの切離が必要になる。共有壁の長さは、麻酔下
に頚筋群や咽頭、頚部食道が弛緩した状態での手術中に
内視鏡下でもっともよく観察できる。さらに、ステープ
リング操作によって憩室底部は押し下げられ共有壁が引
き伸ばされることによって、術前透視によって評価した切除長よりも長くなることが多い。近年クックら(2000)
は共有壁の外側端に縫合器を用いて支持糸をかけること
によって、大きな憩室に対して2回目、3回目のフォーク
の再挿入を行う際に牽引が容易となることを報告した。

3cm以下の小さな憩室に対して内視鏡下にアプローチし
ない理由は、憩室鏡のリップが中咽頭壁を引き伸ばすこ
とによってできた隙間に逸脱して開口部をおさえこみ、
咽頭腔への嚢の開口部の確認が困難となるからである。
また、スリットのなかに憩室鏡下唇をとりこみ嚢が穿孔
する原因ともなる。
7. 術後処置
• 術後
術後数時間で水分摂取を開始し少なくとも術後1日目に
は軟らかい食事を開始する。
退院までに始めの術後1週で食事制限はなくしていく。
健康で若い患者は術当日または24時間で退院できるが、
老人では数日後に退院とする。
• 残存隔壁がない場合
1. 共有壁

術後1〜2週間目に、外来でバリウム透視検査を行う。側
面像で共通腔の底部に残存した隔壁がないなら、レント
ゲンでも結果が得られたことになる。
• 残存隔壁がある場合
1. 共有壁
2. 残存隔壁

通常、小さな残存隔壁が憩室の底部に造影剤の少量の貯
留として確認される(Ong et al., 1999)。そのような小
さな隔壁は共通壁の部分的切離が原因である。しかし、
ときに古い憩室に近接して線維組織が存在し、適切な内
視鏡下の共有壁切除を行ったにもかかわらず憩室後壁と
食道粘膜とが自然に再配列されることを妨げている場合
があると想像できる。
8. ディスカッション
手技の効果:
憩室に対する内視鏡下ステープリング切除術の評価に
は、20世紀末10年の間に考案された低侵襲手術といわれ
る手技が特に興味深く扱われるのは純粋に技術的見地か
らであるということを考慮にいれておく必要がある。こ
ういった手技は、美容面での後遺症が最小で入院期間を
短縮しても、何年にもわたって行われた従来の手術と同
等な長期成績が得られるという仮定のもとで広く行われ
てきた。

結果:
咽頭食道部憩室に対する内視鏡下ステープリング切除術
は術前と比較して、放射線ラベルの食物を用いた咽頭ク
リアランスとUESを通過する丸薬の流通に対する下部抵
抗を改善することが示されている(Perrachia et al.,
1998)。いくつかの施設からは驚くほど良好な手術成績
が報告されており、内視鏡下ステープリング切除術は
Zenker憩室の治療を求める人に治療法の選択肢の1つと
して紹介されてきた。しかし、一方では信頼できる症例
数において完全な症状の改善が得られず、経過観察中に
も依然として時に咽頭食道部の異常を訴えるというあま
り良くない結果も報告されている(Cook et al., 2000;
Philippsen et al., 2000; Van Eeden et al., 1999)。
またすべての報告例の成功率は90%〜100%の範囲であ
り、両部門を総合しても全く症状が消失する症例は50%
〜75%にすぎない

失敗例の検討:
咽頭食道部憩室の内視鏡下治療によっても十分な症状の
消失が得られなかった症例にはいくつかの原因が考えら
れる。1番目の原因としては十分に長い食道筋切開術を
妨げる状況によって、3cm未満の非常に短い切除すべき
共有壁が残存することである。2番目の原因としては、
食道壁のひだの処理による。すなわち正常の食道の蠕動
運動が始まった部位においてむしろ収縮性のない組織が
たくさん存在した場合などである。これはとくに大きな
憩室の共有壁を切除した場合にあてはまる。3番目の原
因は共有壁が十分に切除されず共通腔の底部に長い残存
隔壁が残存し食物の停滞が持続する場合である。このよ
うな点より、改良型30mmステープラーを応用し、その全
長以上の共有壁を切除し穿孔を避けるには十分な3mmの
み隔壁を残存させるようにする。
9. 結論
咽頭食道部憩室に対する内視鏡下のステープリングによ
る共有壁切除術は安全であり、下咽頭が狭く憩室鏡が憩
室内や食道腔へ挿入できない場合でなければ、3cm以上
の憩室を有する症例が適応となりうる。この手技では頚
部に手術痕を残すことなく、術後早期の退院が可能であ
る。健康な患者であれば外来手術でさえ可能である。

しかし我々自身が6種類の違った術式で治療した184例の
経験から、咽頭食道部憩室の治療を望む患者には内視鏡
下アプローチで治療すると頚部アプローチで治療した患
者に比べると軽度な症状が残存する危険性が高いことを
術前に説明しておく必用があることは明らかである。こ
れより咽頭食道部憩室に対するステープリングによる内
視鏡下切除術はハイリスクの高齢患者、頚部手術の既往
を有する患者そして憩室が大きく頚部からアプローチす
れば拡大上縦隔切除を必用とするであろう患者に対して
考慮するべきである。しかし、若年の症例に対する術式
としては頚部アプローチによる筋切開術および固定術を選択するべきであろう。なぜなら内視鏡下アプローチに
くらべて症状の消失率が高いうえに、同等の短期入院か
つ術後数時間で摂食が開始できるからである。


10. Reference