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幽門側胃切除術

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幽門側胃切除術

作者群
媒體類型
刊物
2002-04
普通的
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數位出版
WeBSurg.com, Apr 2002;2(04).
URL: http://www.websurg.com/doi-ot02jp246.htm

幽門側胃切除術

1. はじめに
胃癌に対する腹腔鏡下胃切除術はまだ試験的な手術術式であり、ルーチンには行われているわけではない。
開腹手術による1群、2群のリンパ節郭清(D2リンパ節郭清)を伴う噴門側、幽門側胃切除術ならびに
胃全摘術は日本胃癌学会(JGCA, 1998)により標準術式として定義されている。これらはリンパ節郭清の予後
に対する効果の結果に基づいたものである。しかし、腹腔鏡下胃切除術におけるD2リンパ節郭清が推奨され
るかどうかについての見解は得られていない。従って、今回述べる術式はJGCAの胃癌治療ガイドライン
(2001)におけるStage IA (T1N0) もしくは Stage IB (T2N0)までの胃癌症例に対する一術式として述べる。
2. 一般解剖
• 局所解剖
胃は左横隔膜下のスペースの大部分を占め、上部3分の1は肋弓にて覆われている。胃全体の6分の5は中央より左側に位置している。一般に食道胃移行部は第12胸椎の高さにあり、幽門輪は第1腰椎の高さにある。

1. 食道胃移行部
2. 前腹壁腹膜
3. 胃横隔間膜
4. 胃脾間膜
5. 大網 (胃結腸間膜)
6. 小網
• 解剖学的分類
• JGCA
日本胃癌学会 (JGCA, 1998)の規約により、胃は解剖学
的に次の3つの部分に分類されている。胃上部 (U)、
胃中部 (M)、 胃下部(L)である。腫瘍の局在はその部分
に属する程度により記載され (例 LM や UML)、食道や
十二指腸への浸潤がある場合にはそれぞれEやDを用いて記載する。

E 食道
U 上部
M 中部
L 下部
D 十二指腸
• 迷走神経分布
• 迷走神経幹1
前幹/左迷走神経幹
左右の胃への分枝は副交感神経としての役割を持つ。
胎生期の胃の回転により、これらは小弯側の腹側と
背側に分布する。迷走神経前幹は胃上部から中部の
前壁に分布するLatargetの神経前枝を構成する胃枝に
加え、肝臓、胆嚢および胃幽門部に分枝を出す。

1. 肝枝
2. 幽門枝
3. Latarget神経前枝
• 迷走神経幹2
後幹/右迷走神経幹
胃食道部のレベルでの迷走神経枝の走行は多彩であり、
後幹は縦隔組織の中の食道背側を走行する。
このため、迷走神経切離術の操作に十分に慣れていない
術者はこれを見落とすことが多い。迷走神経後幹胃
上部から中部の後壁に分布するLatargetの神経後枝を
構成する細い胃枝に加え、腹腔神経叢や腹腔神経に太
い分枝を出す。

1. 腹腔神経枝
2. Latarget神経後枝
• 筋層
胃の筋層は3層よりなる。最外層の縦走筋、中層部の
斜走筋(幽門部では欠如している)内層の輪状筋である。
輪状筋は幽門部で括約筋を形成し、厚さ5mm程に
肥厚する。食道胃移行部には括約筋は見られない。

1. 縦走筋
2. 斜走筋
3. 輪状筋
3. 血管解剖I
• 腹腔動脈
胃への動脈血流の供給は、大動脈前面の膵上縁の高さ
から分岐する腹腔動脈幹によりなされている。腹腔
動脈幹の長さは1cmから3cmで、次の3つの動脈に
分岐する:
1. 左胃動脈
2. 総肝動脈
3. 脾動脈
• 小弯1
a. 左胃動脈
左胃動脈は90%の症例で腹腔動脈幹より分岐する。

b. 左胃動脈
下記の分岐を示すこともある:
1. 大動脈より直接分岐
2. 下横隔膜動脈からの分岐
3. 脾動脈からの分岐
4. 総肝動脈からの分岐

c. 左胃動脈
噴門部から2横指下方で小弯に達するまでにアーチを
形成する。前壁側(a)と後壁側(b)に分かれ、小弯側に
沿いながら下行した後、右胃動脈もしくは幽門動脈の
最終枝と合流する。

d. 左胃動脈
左胃動脈は次の分枝を出すこともある。
1. 左肝動脈(10から20%の症例で存在し、機能している)

2. 噴門食道動脈前後枝(噴門部と腹部食道に分布する)

• 小弯2
a. 右胃動脈
通常、右胃動脈は固有肝動脈より分岐する。

b. 右胃動脈
下記の分岐を示すこともある:
1. 胃十二指腸動脈
2. 左肝動脈
3. 総肝動脈

c. 右胃動脈
右胃動脈は幽門に分布して、主な分枝の一つとなる。
それは前後壁枝に分かれ、胃小弯の水平部と垂直部の
間で左胃動脈の最終枝と吻合する。
この右胃および左胃動脈は胃小弯でアーチを形成する。



4. 血管解剖 II
• 胃十二指腸移行部
十二指腸第1部は主に胃十二指腸動脈からの分枝により
血流を受けている。

1. 胃十二指腸動脈
• 大弯
• 定義
胃大弯は大網と胃脾間膜が境界となっている。いずれ
も胃の臓側腹膜に連続した2つの層によって構成されて
いる。大弯は横行結腸を覆うように広がり胃体部と
水平部のレベルでは結腸を越えて下方に伸びている。
一方噴門部のレベルでは胃脾間膜を形成している。
左右の大網動脈と短胃動脈は血管のアーチを形成し、
大網の前葉内を走行する。
• 胃大網動脈1
右胃大網動脈
a. 十二指腸の下縁で胃大網動脈より分岐する。
b. 胃の大弯側に沿い、平均1cmの距離をとりながら右
から左へと走行する。
c. 胃の前後面に沿って大網内を走行する分枝を出す。
• 胃大網動脈2
左胃大網動脈は脾動脈から分岐する。胃結腸間膜内を
走行しながら、胃大弯側の中央部に血流を供給し、
右胃大網動脈の最終枝に合流する。
右と左の胃大網動脈は胃大弯側にアーチを形成する。

1. 左胃大網動脈
• 胃の血管
短胃動脈は脾動脈の終末部より分岐する。それらは
脾動脈幹より直接分岐する場合と終末分枝から分岐
する場合のいずれかである。
胃脾間膜内を脾門部から胃にかけて2から6本の血管
が走行する。脾動脈からの分枝である後胃動脈が胃の
後面で分岐し、胃底部および噴門部に分布する。

短胃動脈の最終枝と左胃大網動脈根部の間に2枚の
腹膜層のみで形成された無血管域がある。この2枚の
層が分かれて脾動脈の反対側で網嚢を形成する。

1. 短胃動脈
• 胃の静脈
胃の静脈は同名の動脈に伴走して胃辺縁部を走行する。
胃の静脈はすべて門脈に還流するが、門脈には弁が
ないため門脈圧が亢進すると容易に拡張する。
左胃静脈は胃上部の小弯の血流を受け、胃膵ヒダの中
を左胃動脈と伴走するが60%から70%は門脈に、30%から
40%は脾静脈に還流する。

1. 門脈
5. リンパ系
• リンパ系
胃の所属リンパ節は局在静脈に沿って存在する。
しかし、UICC(1997)とJGCA(1998)におけるリンパ節
転移に関する病期分類には大きな隔たりがある。
• JGCA病期分類
胃の所属リンパ節に関するJGCA(1998)分類では解剖
学的位置関係によりリンパ節を1番から20番に分類す
る。下縦隔リンパ節である110番、111番、112番に
ついても記載している。これらのリンパ節は原発
腫瘍存在部位(上部、中部または下部)に応じて1群、
2群そして3群に分類する。手術において胃切除に伴う
胃周囲のリンパ節郭清度はD0-D3のように記載される。
すなわち、D0はリンパ節郭清を行わない、D1,D2,D3は
それぞれ1群、2群、3群までのリンパ節郭清を意味す
る。
• 所属リンパ節
• UICC病期分類
胃所属リンパ節は大弯、小弯に沿う胃周囲リンパ節、
左胃動脈、総肝動脈、脾動脈、腹腔動脈周囲リンパ節
そして胃十二指腸間膜内リンパ節である。その他の腹
腔内リンパ節である膵後部(13番、JGCA)、腸間膜(14
番、JGCA)そして大動脈周囲(16番、JGCA)リンパ節へ
の転移は遠隔転移と分類される。JGCA分類と比較する
とTNM分類ではリンパ節転移の程度は、転移リンパ節
の個数が問題となる。つまりN0(所属リンパ節転移
なし)、N1(1-6個の所属リンパ節転移)、N2(7-15個
の所属リンパ節転移)、N3(16個以上の所属リンパ節
転移)、NX(不明)となる。大きさや腫瘍存在部位
よりも原発腫瘍の壁深達度の程度が重要視される。
これはT分類で評価する。
6. 適応
腹腔鏡補助下幽門側胃切除術の適応を以下に示す。
a) 腫瘍占拠部位が中部または幽門側1/3であること。
b) 腫瘍が固有筋層を越えて浸潤していないこと。
c) 肉眼的リンパ節転移が陰性であること。
d) 内視鏡下粘膜切除術や腹腔鏡下局所切除術の適応でないこと。
上腹部の手術既往は絶対的禁忌とはならない。腫瘍径や組織型についての適応基準はない。

腫瘍が粘膜層にとどまることが確認できれば、リンパ節転移は問題とならない。しかし、腫瘍が粘膜下層
まで浸潤(T1)すればリンパ節転移率は約18%となり、少数例ではあるが2群リンパ節転移も認める(Sasako et
al., 1997)。それゆえ腫瘍学的立場からは腹腔鏡下手術においても粘膜下層癌やこれをこえて浸潤した
胃癌に対しては1群と2群リンパ節郭清(D2)が必要である。腫瘍が固有筋層に浸潤(T2mp)すれば2%以下の
少数例ではあるが3群リンパ節転移もみられる (Sasako et al., 1997)。腫瘍浸潤が漿膜下層に達すれば
(T2ss)3群リンパ節転移率は高率にみられる。現在の状況では日本のいくつかの施設においてD2までは
腹腔鏡下のリンパ節郭清が可能である。これらより、腫瘍学的な腹腔鏡下胃切除術のよい適応は早期癌(T1)
であり固有筋層浸潤癌は相対適応と考えられる。漿膜下層以深への浸潤癌(T2ss, T3)はもはや適応ではな
い。
7. 手術室の配置
• 患者
- 全身麻酔
- 気管内挿管
- 軽い砕石位
- 胃管
- 仰臥位
- 両腕は直角に伸ばし、両足は開排する(または両腕は
体幹につける)
- 10度から30度の逆Trendelenburg位
- デュアルルーメン胃管(胃内を空にするために用いる)
- 尿管カテーテルurinary catheter (optional)
• チーム
1. 術者は患者の脚の間に立つ
2. 第1介助者は患者の右に立つ
3. 第2介助者は患者の左に立つ
4. 清潔看護師は術者の背側右側に立つ
• 機器
1. モニター1
2. モニター2
3. 麻酔器
4. 手術台
8. トロッカーの配置
• 気腹
直視下に第1トロッカーを挿入したのちに気腹をおこなう。このトロッカーは臍部から挿入する。
腹腔内には10-12mmHgの圧力でCO2が送気される。
手術台を10-30度傾けることにより視野を展開する。
• トロッカーの配置
A:12 mm, 臍部
B: 5 mm, 右鎖骨中線上肋弓下
C: 5 mm, 左腋下中線上肋弓下
D:12 mm, 左鎖骨中線上で臍の高さ
E: 5 mm, 右鎖骨中線上で臍の頭側
9. 機器
• カメラ
トロッカーA: 30度の斜視鏡とひかえに直視鏡
• リトラクター
トロッカーBとトロッカーC:
1. 無傷把持鉗子
2. ジアテルミー鋏
3. モノポーラー/バイポーラー鋏
4. 吸引洗浄機器
• 手術操作用器具
トロッカーD:
1. 切離用フック
2. ジアテルミー鋏
3. モノポーラー/バイポーラー鋏
4. 吸引洗浄機器
5. リニアステープラー
6. 持針器

トロッカーE:
7. 把持鉗子
10. 規約
• リンパ節郭清の範囲
癌の根治を目的としたD2リンパ節郭清を伴う胃切除術。
リンパ節郭清範囲と郭清リンパ節はJGCA(1998年)により
以下のように決められている:
D0: リンパ節郭清を行わないか不十分な1群リンパ節郭清
D1: 1群リンパ節を完全に郭清
D2: 1群および2群リンパ節を完全に郭清
D3: 1群、2群および3群リンパ節を完全に郭清
• UICC分類
• T - 原発腫瘍
TX: 原発腫瘍の評価が不可
T0: 原発腫瘍を認めない
Tis:上皮内癌:粘膜固有層に浸潤しない上皮内癌
T1: 粘膜固有層または粘膜下層に浸潤する腫瘍
T2: 固有筋層または漿膜下層に浸潤する腫瘍
T3: 漿膜(臓側腹膜)に浸潤しているが、隣接臓器に
まで浸潤していない腫瘍
T4: 隣接臓器にまで浸潤している腫瘍
• N - 所属リンパ節
NX:所属リンパ節転移の評価が不可
N0:所属リンパ節転移なし。 pN0:所属リンパ節転移なし
N1:1-6個の所属リンパ節転移
N2:7-15個の所属リンパ節転移
N3:16個以上の所属リンパ節転移
• M - 遠隔転移
MX:遠隔転移の評価が不可
M0:遠隔転移なし
M1:遠隔転移あり
11. 確認
腫瘍存在部位には術前内視鏡でindia inkを用いて点墨、
あるいは内視鏡的クリッピングを行っておく。

1. 腫瘍
12. 大弯
• 胃結腸間膜
胃大弯側から手術手技を開始する。胃大網動静脈に
沿うリンパ節(No.4d and No.4sb)を完全に郭清する
ために、LCSを用いて胃大網動静脈から約3cm離して
胃結腸間膜の切離を行う。
• 胃大網動静脈
• 左側の切離
胃結腸間膜の切離は胃脾間膜に向かってつづけられ
る。左胃大網動静脈は根部で2重にクリップされ切除
される。のちの吻合に備えてLCSを用いて大弯側の
剥離を遠位側から近位側に向かってすすめておく。
• 右側の切離
胃結腸間膜の剥離を幽門輪にむかってすすめてゆく。
膵頭部において右胃大網静脈を確認し根部で切離す
る。幽門下リンパ節(No.6)を郭清し、右胃大網動脈
を確認し2重クリッピングののち根部で切離する。

1. 右胃大網静脈
2. 右胃大網動脈
13. 十二指腸の切離
• 胃の血管
胃を把持して伸展させたのちに、右胃動静脈を2重
クリッピングし根部で切離する。こうすることにより
幽門上リンパ節(No.5)郭清が可能なる。
• 十二指腸の切離
腹腔鏡下リニアーステープリング装置を用いて幽門輪
より1cm肛門側で十二指腸を切離する。
14. 小弯
• 剥離
• 肝動脈
総肝動脈と左胃動静脈を含む胃膵間膜は膵体部を足側
に牽引することにより明らかになる。固有肝動脈に
沿うリンパ節(No. 12a)と総肝動脈に沿うリンパ節
(No. 8)はLCSを用いて腹腔動脈幹に向かい郭清され
る。総肝動脈に血管テープをかけることによりこの
手技は容易になる。
• 左胃動脈
脾動脈近位部に沿ったリンパ節(No.11p)を郭清する。
左胃動静脈を露出させることによりNo.7のリンパ節郭
清が可能となりこれらの血管を根部で2重にクリッピン
グし切離する。左胃動脈のすぐ頭側に接して走行する
迷走神経腹腔枝(腹腔神経叢に連続する)も腹腔動脈周
囲リンパ節(No.9)を完全に郭清するために切除する。
• 右噴門リンパ節
噴門から肛門側へと小網切離を胃切離予定線を越えて
続けることにより右噴門リンパ節(No.1)も小弯リンパ
節(No.3)とともに郭清される。
15. 開腹
臍部の頭側10cmの位置に5-6cmの小切開をおき開腹す
る。切除予定胃はこの小切開創より郭清されたリンパ
節群や周囲脂肪とともに体外に取り出される。
16. 胃の切離
リニアーステープリング装置を用いて近位側の胃を切離
する。切離線はクリップや点墨を参考にして腫瘍の占拠
部位によって決定される。
17. 胃十二指腸吻合
胃十二指腸吻合は2層吻合で行う。右鎖骨中線上で臍部
より2-3cm頭側のトロッカー刺入創(E)よりWinslow孔に
ドレーンを留置し閉腹する。
18. 術後管理
a) Winslow孔のドレーンは経口摂取が開始される術後3-4日目までおいておく。
b) 胃管は胃液や腸腋の量が増えなければ術後1-2日目に抜去する。術後3-4日目に流動食を開始し数日をかけて徐々に常食とする。
c) 術後7-10日でほぼ正常の体力に回復する。
19. 結論
手術手技と機器が進歩したことにより、腹腔鏡下手術は急速に発展してきた。現在では早期癌がもっとも
良い腹腔鏡下手術の適応であろう。広範囲なリンパ節郭清をともなう胃切除術(D2)が可能であるとする
報告(Uyama et al., 1999)もあるがいまだ標準手術として認められていない。
20. Reference