経口門的内視鏡下マイクロサージェリー(tem)

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経口門的内視鏡下マイクロサージェリー(tem)

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2002-03
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WeBSurg.com, Mar 2002;2(03).
URL: http://www.websurg.com/doi-ot02jp204.htm

経口門的内視鏡下マイクロサージェリー(tem)

1. イントロダクション
経肛門的内視鏡下マイクロサージェリー(TEM)は肛門縁より4cm-18cmの間に存在する直腸腫瘍の局所切除を行うための低侵襲手術手技である。切開創が小さいため、回復が早い(Demartines et al., 2001)。
従来の経肛門的切除と比較すると、TEMでは肛門縁から18cmまでの高位直腸腫瘍の術野展開にすぐれている。経肛門的切除より精密な切除で合併症も5%と低率で、入院期間も平均5.5日とより短期であることより、TEMの信頼性は高い、症例によっては開腹による低位前方切除術よりも効果的な外科治療となる(Winde et al., 1996)。しかし、TEMには特殊な機器や技術に加えて手術適応を厳密にする必要があることより、いまだ確立された手技とはいえない。
2. 解剖
• 原則
直腸はストレートに走行する消化管の終末部分である。直腸の上部3分の1は前面と外側面を腹膜にて覆われている。加えて、直腸は筋膜(直腸固有筋膜)に取り囲まれ、これは背側においては直腸間膜の最外層となっている。

1. 腹膜
2. 直腸固有筋膜
3. 直腸間膜
• 局所解剖
直腸、直腸間膜と直腸固有筋膜は仙骨と仙骨神経の前面、尿管・骨盤内大血管と骨盤神経叢の内側、そして泌尿生殖器系臓器の背側に存在する骨盤筋膜に覆われている。これらの筋膜層は近接しつつ全周性の区域を形成している。すなわち、外科的剥離層は直腸固有筋膜と壁側腹膜との間に存在する。

1. 仙骨神経
2. 腸骨血管
3. 仙骨前面筋膜
4. 尿管
5. Denonvillier筋膜
• 形態学
直腸は円筒状で12cmから15cmの長さを持ち、仙骨岬角より凹面状の仙骨の前面で尾側へと連なっている。近位側と遠位側は直径3cmから4cmである。中間部では直径6cmから8cmであるが、もっと広いこともある。
• 直腸間膜
直腸は、特にその背側において直腸間膜と呼ばれる脂肪織によって覆われている。直腸間膜はS状結腸間膜から下方に向かって伸びつつ徐々に細くなり、肛門括約筋直上の直腸背側面にて終る。直腸間膜には、下腸間膜系血管の終末部と近位側枝およびそれらのリンパ腺が含まれる。

1. 腹部大動脈
2. 下腸間膜動脈
3. 上直腸動脈
4. 固有筋膜
5. 腹膜
6. S状結腸間膜
7. 直腸間膜
3. 適応
良性腫瘍:
主な適応は肛門縁より4cm-18cmの間に存在し内視鏡的切除が不能な腺腫である。大きさでは直径が20mmから管周の4分の3までがもっとも良い適応となる。適切な安全域を得るために全層切除が推奨される。これは手技的には粘膜切除よりも容易であるとともに乳頭状腺腫のなかに存在する可能性がある微小直腸癌を取り残さずに済む。事実、そのような小さな-潜在-癌は多いものでは31%に存在すると報告されている(Winburn, 1998)。

低悪性度直腸癌:
TEMはT1 の低悪性度腫瘍の切除に対しても行われる。しかし、適応は厳格にする必要がある。TEM後の再発率は、T1 低悪性度腫瘍では4-8%(Mentges et al., 1997)であるのに対し、T1 高悪性度腫瘍では30%にも達する(Heintz et al., 1998)。

狭窄:
TMEは歯状線から5-15cmの部位の高度の瘻孔形成後や結腸直腸吻合後の狭窄切除にも適用しうる。

他の適応:
TEMを用いた直腸固定術や胃癌に対する経皮的治療などが報告されている。しかしながら、その有用性を的確にコメントできるような十分なエビデンスはない。
4. 術前処置
• 患者選択
腫瘍の進行度と病理組織学的グレードの的確な術前評価がTEM成功の鍵となる。術前臨床検査としては一般には直腸鏡と生検、360。内視鏡プローベ(7 MHz)を用いた直腸超音波内視鏡検査と括約筋機能検査がある。良性腫瘍と低悪性度直腸癌(G1, G2) のT1腫瘍のみにTEMが考慮されるべきである。

1. 良性腫瘍
2. T1腫瘍
• 術前処置
腸管処置は通常の開腹手術と同様に、ポリエチレングリコール液で4時間の洗浄処置をおこなう。グラム陰性菌や嫌気性菌に対する予防的抗生剤投与を麻酔導入時におこなう。
5. 手術室の配置
• 患者
患者と術者の位置は直腸壁の腫瘍占居部位によって決定する。原則は腫瘍が常に術野の下方に存在するように配置することである。
患者の位置は:
1. 仰臥位(後壁の腫瘍の場合)
2. 腹臥位(前壁の腫瘍の場合)
3. 右または左側臥位(それぞれ右壁または左壁の腫瘍
の場合)

手術は通常全身麻酔下に行われるが硬膜外麻酔や腰椎麻酔でも可能である。
• チーム
手術器具が直視下に見えるように、術者は座って直腸鏡から病変を直接観察する。こうすることで術野を3次元視野で観察することができる。
• 機器
TMEの基本機器は直腸鏡機器である。手術用の直腸鏡にビデオカメラを接続することによって、助手や見学者がビデオモニターで手技を確認することが可能になる。両眼視することによって6倍の立体画像を見ることができる。
送気器が直腸腔へ規則正しく送気を行い、同時に組織を焼灼したときの煙や排液を吸引する。通気器は手術用直腸鏡に接続され以下の機能をもつ;通気、術野の洗浄、内視鏡の洗浄、吸引、内圧調節モニター、ライトケーブル。

1.  多機能機器
2a. 単眼視用カメラ
2b. 立体視双眼鏡
3.  通気器
4. ライトケーブル
6. 機器
• 原則
6倍の立体視双眼鏡の付いた40mm径、120または200mm長の手術用直腸鏡を用いて手術をおこなう。直腸鏡の先端は下向きに角度がついている。
直腸鏡の中を通して用いる手術器具は腹腔鏡用の器具と似ている。しかし先端には40。の角度がついており腫瘍を確認しやすくなっている。2種類の器具(例えば鉗子と電気メスまたは吸引器または持針器)を同時に直腸鏡に挿入することができる。腫瘍全体に近寄り良い視野を得るために、直腸鏡の位置は頻繁に動かして限られた術野と手術器具の長さを補うようにする。U字型の可動性支持器を用いることによって頻繁に距離を変えることができる。

1. 直腸鏡
2. 単眼視鏡
3. 立体視双眼鏡
• 機器
1. 直腸鏡
2. 鉗子(右または左に角度がついたもの)
3. 持針器
3a.3.0モノフィラメント吸収糸 
3b.糸の固定に用いる銀クリップ
4. クリップ固定器具
5. 鋏
6. 電気メス
7. 切除
• 送気
直腸鏡にパラフィンオイルを塗り愛護的に肛門を拡張しながら直腸鏡を挿入する。
直腸の内腔を広げ正確な切除を行えるように、送気器を用いて二酸化炭素を10cmH2Oの圧を保つように送気する。空気漏れを防ぐ目的で、手術器具にはプラスチックキャップを被せ気密性を保ったうえで直腸鏡に挿入する。吸引と送気を組み合わせた内視鏡外科装置を用
い、一定の高流量ガスを保ちつつ電気メスによる煙を
吸い取るようにする。高流量は従来の腹腔鏡と同様に
圧で調節される。このようにして腫瘍をうまく術野に
展開すれば切除が可能となる。
• 切除
まず腫瘍基部近傍で右側の組織を愛護的に把持鉗子で把持して粘膜に緊張をかける。

1. 電気メスで病変の位置と境界をマークする。
2. 再度粘膜を凝固しながら電気メスで右角から傍直腸
脂肪組織にまで切り込む。この操作では凝固面まで
少なくとも5mmのマージン(安全域)を保つことが
重要である。拡大立体視鏡を用いるためこの手技は
可能となる。
3. 右尾側から左頭側に向かい傍直腸脂肪織内を徐々に
凝固切開していく。血管が見えてくるので凝固止血
していく。通常、定期的に多機能プローベの凝固組
織片を除いてきれいにする。プローベは切除、凝
固、洗浄そして吸引を同時もしくは連続して行なう
ために用いる。出血した血管が脂肪組織の中に隠れ
てしまい止血がより困難となるため、血管を切って
しまう前に止血しておくことが重要となる。
• 標本摘出
標本が切除されたら摘出し、ベタジン液(イソジン液)で術野をよく洗浄する。腫瘍が切除されたら止血は容易になり、出血している血管を根部で把持し凝固できる。われわれの50例の経肛門的内視鏡下マイクロサージェリーの経験では術後出血はない。粘膜欠損部を縫合する際には直腸周囲脂肪組織もすくって止血を確実にしておく。

1. 標本摘出
2. ベタジン洗浄
8. 再建
• 直腸壁の縫合
1. 下方切除縁
2. 上方切除縁
3. クリッピング
4. 横縫合
5. 縫合の終了

腫瘍切除部は結節または連続縫合で縫縮する。直腸壁は3.0合成ポリグリコールモノフラメント吸収糸で連続縫合をおこなう。術野が狭く直腸内結紮は困難であるため、縫合糸は銀クリップを用いて固定する。縫合は尾側から頭側に向かって、切除下端から順に上端までおこなう。縫合が終了したらクリップで固定する。直腸壁の縫合閉鎖がしっかりするまで、横方向の縫合を追加する。横方向の縫合は二次的な直腸狭窄を予防する目的もある。
• 手技の終りに
最後に摘出した標本を板上に引き伸ばして固定し切除断端に正常組織が5mm存在することを病理医がはっきりと確認できるようにする。
9. 術後処置
麻酔が覚めれば坐位と歩行を許可する。
術後48時間は流動食とする。
術後3-4日で退院となる。
術後6週目に初めて経過観察をおこない、3ヵ月後に直腸鏡を含めた最終臨床検査をおこなう。癌の再発を見つけるために、始めの1年間は3ヶ月毎、2年目からは6ヶ月毎に経過観察をおこなう必要がある。
10. 合併症
合併症発生率:
概して、経肛門的切除に関連した局所的な合併症は4%-8.3%の間であり、一方全身的な合併症は14%-21%である(Mentges ら, 1997; Winde ら, 1996)。致死的な合併症はきわめて稀である。文献上3,000件のTMEのうち、死亡例は1件である。これはTME後の後腹膜化膿性炎によるもので敗血症から死亡に至った。


括約筋機能に対する影響:
驚くべきことに、4cmに肛門を拡張(手術用直腸鏡による)させても、ほとんど括約筋機能には問題がない。われわれは15%の症例に、一時的なgrade IIの便失禁を認めたが術後3ヶ月で全症例が回復している。これは以前の報告と合致する結果である(Hemingway ら,1996)。
肛門拡張の効果に対する研究では25%-37%の範囲で術前に比して術後の肛門括約筋圧は減弱するが、臨床的に便失禁は6-16週以内で完全に回復することを示している(Banerjee ら, 1996)。
11. 限界
癌治療におけるTMEの限界:
リンパ節転移があれば、早期直腸癌に対する局所治療は適応外となる。T1直腸癌のリンパ節転移率はtumor grade (Heintz ら, 1988)や年齢によって0〜15.4%と報告されている。年齢(>45 years)はリンパ節転移の有意な危険因子であると考えられている (Sitzler ら, 1997)。
TEM術後の局所再発率は3.8% (Mentges ら, 1997)であり、従来の経肛門手術の23%(Warneke ら, 1989)に比べて有意に良好である。

TMEと補助療法:
放射線療法または腔内照射による直腸癌に対する保存的療法の30%は不成功となる。それゆえTEMを用いた直腸癌治療の術後補助療法として放射線療法をおこなう適応はいまだ議論の多いところである。この点に関しては、進行低位直腸癌に対して局所切除が根治的外科切除と同様の効果を示さなかったという単一施設のレトロスペクテイブな報告が大勢を占めている。 (Weber and Petrelli, 1998)。
12. 結論
TEMはいろいろな意味で他の内視鏡や腹腔鏡手技から区別される:
- 拡大視立体鏡を使用する:単眼鏡やビデオカメラと
 比較すると、TEMを用いた手術野は深部感覚が特に優
 れている。
- 腹腔鏡と異なり、手術器具が内視鏡と平行に挿入さ
 れ同一平面内を移動する。このため特別な訓練を受
 けて技術を習得しなければ、腫瘍を完全に展開する
 ことは困難である。
- 機器が高価である(‾US$50,000) :腹腔鏡で治療され
 る症例に比べ、TEMで治療される症例は少ない。TEM
 装置が高価であるため世界的な販売を考えても、実
 際は限られたチームの受容しかない。
- 問題のない術後経過:術後鎮痛薬は一般的には少量
 のacetaminophenに限られ、低位前方切除と比べて入
 院日数が短く、合併症発生率が少ない。

適応症例を選び十分な術前進行度診断を行えば、低悪性度T1癌に対する経肛門的内視鏡下マイクロサージェリーは根治的外科療法と比較して低い合併症発生率で行いうる。現在検討中の結果では局所治療と根治治療との間に5年生存率において有意差はない。TEMの適応としての低悪性度癌とは脈管侵襲がなく分化度がG1-G2のT1癌で切除断端まで少なくとも5mmの距離がとれる45才以上の症例に限られる。しかし、この適応を決定するにはRCTの結果を待つ必要がある。文献とわれわれのこれまでの手術経験によれば、他のタイプの直腸癌はすべてTME(total mesorectal excisions)で治療するべきである。直腸癌の局所治療後の補助療法の有用性についてはいまだ評価の最中である。

この手術手技は適応症例が少なく特殊な技術であり機器費用が高いためいまだ評価中であるにもかかわらず、この話題に関するいくつかの報告がある。現在進行中の無作為化臨床試験によって直腸癌に対する経肛門的内視鏡下マイクロサージェリーの適応を明白にするべきである。現在のところ明らかな適応症例は脈管侵襲のないT1G1G2癌のみである。
13. Reference